キャバ嬢の社会学 北条かや
を読んだ.
キャバクラとキャバ嬢の実態を潜入調査した本.
社会学としてのジェンダーの中でのキャバクラの位置はよく知らないし,
社会学の中での調査に関してのお作法等も知らないので,相対的な評価はできないが,ざっくりとした感想だけ.
女性としてのコンプレックスからジェンダーに興味をもったこと
「あの人たちと私は違う」という発想そのものが差別意識に根ざしたもの,内面化したものであること
実際に潜入調査した行動力
以上がこの本で評価している点.
無意識的な差別意識の問題点と,気づけないゆえの難しさを感じた.
だが,無意識である以上,意識以外による解決策が必要なんだろうなとも思う.
続いて,
オーソドックスなジェンダーの話との関連性が見えない.
事実の羅列しかなく,どのような点がどのような観点で問題なのか,本人の主義主張が見えない.
結局,本人の承認欲求が満たされて,めでたしめでたし,と終わっている.
以上がこの本で評価していない点.
本人の承認欲求が満たされたことに関して,とやかく言うつもりはない.
むしろ,良いことである.
ただ,事実の羅列以上の「論」や「学」を展開しなければ,ただの日記と等しい.
修論と銘打っている以上,何を目指して何がわかったのか,明示されていてほしかった.
ただし,若い女性の率直な現実という点は揺るがないはずで,そこを社会学的な意識によってまとめたという点は新しいのだと思う.
本人の女性性とそれを取り巻く現状,それら全てが「女性」にのしかかる.
「女性」として「女性差別」の問題にアプローチしている点.
このこと自体が大きな問題であるのだと思う.
結局社会的強者である「中年男性」の手のひらの上と言えなくもないが,
こういう現実からのアプローチの方が問題の解決に近づく可能性はあるかもしれない.
何が新しくて何が新しくないかもわからないが,
僕にとっては無意識的な差別意識の内面化の身近さを感じられた点が良かった.
社会学,ジェンダー学の入門書としては,良くないんだと思う.
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